現場で働く先輩たちの声

現場で働く先輩たちの声

地質調査会社 技術部(技術部主任) 佐々木宣欣さん

地質調査会社 技術部(技術部主任)
佐々木宣欣さん

入社11年 / 弘前大学大学院理工学研究科
技術士補、地質調査技士、地すべり防止工事士、地質情報管理士

大学時代に学んだ「古環境変遷史」への興味が、今に続いている。
遥か遠い過去を知るのが、好きなのかな(笑)。

大学時代に学んだ「古環境変遷史」への興味が、今に続いている。遥か遠い過去を知るのが、好きなのかな(笑)。

入社10年を過ぎ、責任もふえて。でも飽きることはありません。

入社10年を過ぎ、責任もふえて。
でも飽きることはありません。

今取り組んでいるのは、老朽化した橋を修繕するか架け替えるかを決めるための地質調査。土を観察し、試験データを「調査報告書」にまとめます。業務を受注した際は、まずその目的のためにどんな調査が必要なのかを判断して、現地での調査計画を立てる。そこから現場が動き出します。高度経済成長期につくられた建造物は一斉に耐用年数が近付いているので、最近こうした仕事はふえてきていますね。

現場は山間だったり平地だったり、似たように見えても畑が近い、民家があるなどその都度条件が異なるので、慣れる、飽きるはありません。採取したサンプルに「へ~、こういう岩出るんだ~」と驚いたり、学生時代資料集でしか見られなかった、珍しい地層の重なり「露頭(ろとう)」の実物に出会えるのも醍醐味。11年も仕事を続けているのは、何万年何億年の過去を知るのが好きだからかも…と、最近自分でも思うようになりました(笑)。

サンプルの「ボーリングコア」を目視やX線で観察し、「悪さをしそうな部分」があれば調査報告書に記載する。

一度興味を持ったら、ずっと続けてやる性格。

一度興味を持ったら、
ずっと続けてやる性格。

小学生の頃は外遊びとテレビゲーム、中学校は勉強に集中、高校はバドミントンに熱中しました。一度興味を持ったら長く続ける性格なんです。逆に興味のないことは思考から外れて記憶にも残りません。そういえば今でも休日は、ゲームとバドミントンをやっていますね(笑)。

大学では地質学、鉱物学、岩石学をはじめ、何万年単位で環境の歴史をひもとく「古環境変遷史」を学びました。研究室では論文と研究の日々。研究テーマは「南極の氷を使った年代測定」で、氷の中の気体を分析して微量の元素Be(ベリリウム)を抽出することで地球の気候変動を研究しました。

就職を探すときの基準は、地質に関われることと、夏暑くないこと(笑)。北海道と東北の数社を受けて今の会社に入りました。学生時代、地質調査業は油田など巨大な工事のイメージがあり、ふつうの建物や構造物でも同じ仕事があることは後で知ったんです。理系の中でも地学は不人気で認知度も低いといわれますが、表に出ないだけで工事のもっとも初期の段階であり、欠かせない仕事です。縁の下の力持ち的な、大事なことやっているという実感がいつもあります。

思い出の現場は、なんといっても冬の利尻島。

思い出の現場は、
なんといっても冬の利尻島。

砂防ダムを土石流に耐えるよう補修・保全するための調査で、冬の利尻島に1カ月いたことがあります。大きい石がゴロゴロある現場にボーリングの機械を運ぶのですが、寒風吹きすさぶ中での作業です。宿から現場までの移動も大変で、おまけに荒天で船が欠航するので島から物資が途切れる。コンビニからものが消えていく様は、災害時を思い起こさせました。その調査の数年後、ネットで砂防ダムが完成した姿を見たときは感動しました。ダムに土石流をちゃんと止めた跡が残っていたからです。

もうひとつ、北海道胆振東部地震の調査もやりがいがありました。余震もあるし怖くないとは言えませんが、災害時は業界全体で対応するので、会社ごとに割り振られた役割を全員でこなします。ボーリングの管理だけでなく、さまざまな業種の人が効率よく協力し合えるよう段取りやスケジュールを考えて采配するのも重要な仕事でした。

「誰が読んでもわかるよう図やグラフを見やすく、言葉使いもていねいに」を心がけるという、調査報告書づくり。この1冊が工事の基礎になる。

次は国家資格の技術士の取得が目標。

次は国家資格の
技術士の取得が目標。

資格は、持っていないと業務の管理技術者になれないので、できる限り挑戦しています。先週もRCCM(土木分野の民間資格)を受けたところ。受かれば資格手当がもらえます(笑)。次に目指しているのは国家資格の技術士。仕事の後に先輩に質問したり、休日会社に来て勉強しています。会社だと図書館より専門書が充実しているので、調べものがしやすいんです。若手の頃は調査業協会で開かれる資格取得支援の講習会にも参加しました。土質工学的な視点で地質を捉えたり、業界を知る機会にもなり意義深かったですね。

当社の社員は約50人、まとまりがあってなんでも相談しやすい雰囲気です。社員ひとりひとりが会社を運営・維持していく気概を持っているのも、当社の特長だと思います。私自身、会社を維持していくことが将来の目標ですから。

若い人で、会社では歯車になると考えている人がいるかも知れないけど、組織に入っても自己を確立していることは大切です。情報を集めやすい時代なのだから、昔からこうだからこれからもそうしなきゃ、と決め付けず、自分の意思や立場を常に持っていてほしい。私もそういう人と働きたいと思っています。

取材日:2023年11月6日

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