現場で働く先輩たちの声

現場で働く先輩たちの声

地質調査会社 地質部 宿田さとりさん

地質調査会社 地質部
宿田さとりさん

入社4年 / 北海道大学大学院環境科学院 / 技術士補(建設部門)

この仕事に向いている点があるとしたら、
それは「自然と触れ合っていたい」という気持ち。

この仕事に向いている点があるとしたら、それは「自然と触れ合っていたい」という気持ち。

子どもの頃から変わらない、自然への興味。

子どもの頃から変わらない、
自然への興味。

小さいときよくキャンプや登山、海水浴に連れて行ってもらっていたせいか、もともと自然に対して興味があったんです。理科の先生になろうと教育大学に進み、地学を専攻して自然の中を歩き回りながら地質構造を学びました。火砕流をテーマに卒論に取り組むうち、海洋学にも関心が向いて北海道大学大学院環境科学院に進学。就職を考え始めた頃、会社説明会を聞いたのが今の会社です。実は大学4年のときも説明会で同じ人事担当者に会っていて、何か強い縁があったのでしょうか(笑)。同居している両親は最初、地質調査という仕事にピンときていませんでしたが、私が毎日楽しく働いているのを見て安心したようです。

今の仕事は、公共事業の地質調査。橋や道路、砂防ダムをつくるために、地盤がしっかりしているかをボーリング調査で確認する仕事です。10㎝径×数m~数十mの深さで採取する土や岩のサンプルを「ボーリングコア」と呼ぶのですが、それをどの深さまで掘るか決め、持ち帰ったサンプルはスタッフで手分けしてその性状(粘性土、砂質土、礫の有無など)を調べます。たとえば岩の場合は、亀裂が多いと斜面が崩れる可能性が高くなるので、コアをよく観察して亀裂の状況を推測します。ときにはハンマーで叩いて聞く音も重要な情報になります。また、調査の前に機械をどのルートで運ぶと安全なのかを計画するのも私の仕事です。何時間も歩いて調査するので、雨には濡れるし虫もいる、山に登れば泥んこです(笑)。でも安全に降りる方法は身に付けているので大丈夫です!

岩盤の「ボーリングコア」を叩いて調べる。
固さによって工事に使う機械や道具、そして予算も変わってくる。

業界では珍しい?地質に興味を持つ女性が集まった部署。

業界では珍しい?
地質に興味を持つ女性が集まった部署。

事務所では図面を確認したり、書類をつくる作業をします。私の席の横も後ろも女性の同僚。振り向けばなんでも聞けて便利です(笑)。決してキレイとは言えない仕事なのに、20~30代の若手10人のうち5人が女性です。生物を学んで入社した今年の新卒の人もそうですが、みんな地質に興味を持って入ってきていますね。山に登るには体力がいるけど、周りの人が協力してくれるので困ったことはありません。男性とほぼ同じ仕事をしていますし、差別もハンデも意識したことがないですね。職場の雰囲気はいつも和気藹々。同僚も上司も、なんでも相談し合える関係です。

ときにはおしゃべりもはずむ、和やかな仕事環境。

成果物「調査報告書」は、最後まで質を上げる努力を。

成果物「調査報告書」は、
最後まで質を上げる努力を。

今年、全国地質調査業協会連合会の技術フォーラムに発表者として立候補しました。2日間で100人くらいが発表する催しです。私のテーマは「市街地における仮設の対策と工夫」で、防音用の吸音パネルの効果などについて発表しました。街中の現場には山とは違う大変さがあるので、その対策を多くの人に知って欲しかったんです。

この仕事の最終形である成果物は発注者に提出する「調査報告書」なんですが、街中のものは分厚くなりがちです。地盤の性状だけでなく、そうした騒音や交通面といった周囲への影響など、気にしなければいけないことが多く、報告書にはそれらもすべて記録するからです。また報告書は出して終わりではありません。発注者は隅々まで確認して考察が正しいか確認し、説明を求めてくることも多いので、編集する過程でも日々社内で意見交換し、先輩や上司などいろんな人の視点を生かしながら内容の質を高めていくようにしています。こうした経験を糧に、早く技術士の資格を取るのが今の目標です。

いろんなまちへ行けて、その土地の人々や風土に触れられる。

いろんなまちへ行けて、
その土地の人々や風土に触れられる。

当社の業務は北海道全域が対象なので、私も全道くまなく行っています。この前も静内、豊浦……離島に行っている人もいます。地質構造は土地によってさまざまだし、岩盤からキラキラした鉱物が出たりするのも面白い。もともと川が流れているだけ、鳥がさえずるだけで喜びを感じるタイプですから(笑)。もちろん自然は安全ばかりではありません。最近問題になっているクマも、私たちがクマさんの生息地におじゃましているのだから、どちらも傷付かないよう音を出したり夕暮れを避けるなど対策しています。

災害時にいちばん最初に現場に駆け付けるのも地質調査会社の重要な仕事です。川の氾濫、土砂崩れはまず調査をしないと対策が取れません。自分で計画を立てて実行するのは得意な方で、マニュアル通りにいかない緊急時の方がむしろ力が湧いて頑張れます。怖さよりも復旧させなくちゃという思いの方が強いですね。

ふだんの仕事で達成感が得られるのは、橋や道路が完成して地域の人々が使っているのを見たとき。人々の安全や暮らしやすさに直結していることを実感します。自然が好きな人、まちづくりの土台となる仕事に興味のある人なら、きっとやりがいがある仕事だと思います。

取材日:2023年11月6日

インタビュー動画